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「近所の住民たちが証言し始めました」  村澤が嬉しい報告を持ってきてくれた。  キキの家は地元の大地主で周辺の家は土地を借りていた。そのため今まで見てみぬふりをし、口を閉ざしていたそうだ。 「幼稚園にも通わせず外にも殆ど出していなかったようなので児童相談所も動き始めました」  窓もない面会室に爽やかな風が吹いた気がした。 「ところで貴博さん、たくさん描きましたね」 「まあ……時間だけはたくさんあるので」  貴博が描いたスケッチブックを村澤は興味深そうに見た。 「設計士になったらどうですか?」 「え? いや無理です。今から勉強なんて」 「頭が柔らかいうちに勉強するべきですよ」  村澤が帰ったあと貴博はスケッチブックを開いた。家族が仲良く穏やかに暮らせる家。それはどんな家なのだろうか。貴博の頭の中は描きたいことでいっぱいだった。 〈終〉
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