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 ヨナは中学1年生だった。同級生は真新しい制服に身を包んでいたが、ヨナは古着屋で買った色褪せた制服を着ていた。カバンも靴も誰かが使い古したものを使っていた。  親は時々しか家に帰って来なかった。学校の給食以外は殆ど食べていなかった。たまに母親が男と一緒に帰って来る。「今夜はどっか行ってて」と母親はヨナに千円札を握らせ外に追い出した。  行くあてもなく公園のベンチで座っていたヨナを貴博が発見しアパートへ連れて帰った。 「ヨナも可哀想な子だった。夜中に1人で公園にいたから俺が保護したんだ。変な男に連れて行かれる前に助けなきゃと思ったんだ」 「警察に届ければ良かっただろ」 「警察に行こうと俺は言った。でも警察に行けば家に帰されてしまう、それは嫌だとヨナが言った。その時詳しい事情は聞かなかったけど、きっと家で辛い思いをしてるんだと思った。だから助けたんだ」 「じゃあお前は彼女を救えたのか?」 「……」  ヨナは世話になっているお礼にと掃除や洗濯をすすんでやってくれた。家でいつもやっているらしく手慣れた様子だった。貴博の優しさにヨナは思い切り甘え、そんなヨナを貴博は愛しく思った。2人はお互い思い遣りながら暮した。これが家族なのかと感じながら。
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