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 留置場の壁にもたれ、貴博は呆然としていた。ここにも窓がない。閉鎖された空間。  自分のした事はそんなに悪い事なのか。どうして自分が捕まりキキの親もヨナの親も罪に問われないのだろうか。自分は間違っていないという自信はあった。なのに誰からも受け入れられない。  世の中の無関心さに腹が立った。絶望した。自分たちは要らない人間なのだろうか。だから親からも世の中からも疎まれ、窓もない部屋に閉じ込められなければいけないのだろうか。  そして自分にも腹が立った。自分の行動は何もかも裏目にしか出ない。良かれと思ってした事が余計に相手を傷付けてしまう。目の前で苦しんでいる人間がいても助けてはいけないのか。同情は罪なのか。  ヨナは大丈夫だろうか……。  悶々としていると足音が聞こえた。 「面会だ、出ろ」  貴博は自分に面会人が来るなんて思っていなかった。親とはすっかり疎遠になっている。不審に思いながら貴博は警察官に連れられ面会室へとやって来た。  そこにはスーツ姿の若い男性がいた。知らない人物だ。 「はじめまして。私は弁護士の村澤(むらさわ)です」  男性はそう言うと貴博に笑顔を見せた。
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