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 それから貴博は毎日あの家の前で様子を伺った。しかしいつもしっかりカーテンは閉められていて中の様子は全く分からなかった。防音の効く家というのは怖いと思った。  そんな悶々とした日々を送っていたある日、雨の降る肌寒い夜だった。  残業で帰りが遅くなりすでに日付けが変わっていた。今日もまた朝から仕事だ。早く帰らなければと貴博は家路を急いだ。例の家を横目で見ながら通り過ぎようとした。家人は寝ているのか家は真っ暗だった。しかしその時、ガサリと庭から音がした。野良猫か何かが入り込んだのかとチラリと見ると、女の子が雑草の上で丸まっていた。  ぶかぶかの、多分大人物のTシャツを着ていた。寒いのか膝を曲げTシャツの中に足をしまい込んでいた。髪もTシャツもずぶ濡れだった。このままじゃ風邪どころか肺炎になってしまう。  貴博は庭に入り込んだ。女の子は貴博に気付き体をこわばらせた。何か言おうと口を開きかけた時、貴博は女の子を抱きしめた。女の子は逃げようと手足をバタつかせたが貴博が震えながら涙を流しているのを見て抵抗するのをやめた。貴博はそのまま女の子を抱き上げ自分のアパートへと連れて帰った。
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