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「キキは親から酷い目にあわされていました。助けてあげなければ大変な事になっていました」
「両親はそんな事実はないと言っている。それに娘本人も、近所の人間もだ。お前の勝手な想像だ」
「そんなわけはありません。親が認めるわけないじゃないですか」
「じゃあ娘はどうなんだ。酷い目にあわされてるなら何か言うはずだ」
「子どもは……バカなんです」
「はあ? バカだから簡単に誘拐できると思って誘拐したのか?」
「違います」
「娘は両親が迎えに来たらしっかり親と手を繋いで帰って行ったぞ」
「だから、子どもはバカなんです……」
どんな親でも子どもにとっては唯一絶対の存在なのだ。酷い事をされても親をかばう。他に優しくしてくれる人がいても子どもは親の側にいることを望んでしまう。"血"のなせる業なのだろうか。そんなものは何の意味もないと知るまでにどれだけの年月を費やさなければならないのだろうか。どれだけの傷を負わなければ気づかないのだろうか。
「だったら何でその時警察を呼ばなかったんだ。そうすればすぐに娘は保護されたしお前も疑われずに済んだ」
「……すぐに、一秒でも早く温めてあげたかったんです。いや、何も考えられなかった。ただ可哀想で体が勝手に動いてしまったんです」
刑事は溜息をつき、厳しい目で貴博を見た。
「お前には前歴があるだろう」
「それは……俺も両親からずっと暴力を受けてきて体も心もおかしくなっていたんです」
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