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 貴博も幼い頃から両親にDVを受けてきた。肉体的にも精神的にも。それでも中学生になると体は大きくなり力も強くなっていた。そんなある日、とうとう貴博は両親に逆襲をした。すぐに警察を呼ばれた。しかし近隣住民や学校の教師、同級生たちからの証言もありDVを認められ施設に入ることになった。やっと親から離れる事ができたのだ。施設で高校を卒業し、その後現在の建設会社で働くようになった。社長も事情を分かっていて親切にしてくれている。 「ふん、そんな事は分かってる。だがお前が親に暴力を振るったのは事実だ。そうならないように逃げる事もできたはずだ。だがそうしなかったのはお前だ。いつか仕返しをしてやろうと思ってたんだろ?」  分かっていた。呑気にでぬくぬくと育てられた人間には何を言っても無駄な事を。小学校の時の担任もそうだった。勇気を振り絞り親の事を相談したら「お前のためにきちんと躾けようとしてくれてるんだ。ちゃんと親の言う事を聞きなさい」と言われた。市役所にも電話をした。すると「怪我をしたならその時に写真を撮っておいて下さい。証拠が無いことには何もできない」と言われた。小学生の貴博は写真を写す物など持っていなかった。最後の頼みの綱と、児童相談所なる所へ相談してみた。  来た。相談所の職員が家に来てくれた。しかし親は「そんな事実はありません」と職員を追い帰した。その後の暴力は今までの比ではなかった。  子どもができる事はここまでだった。逃げろ? 何処へ? 思い付かなかった。貴博はただ無になった。何も考えず何も感じない。ただの人形になった。
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