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「そっか。まだ字を教えてもらってないんだね」  貴博は紙に"キキ"と書いた。 「ほら、これが"キキ"。君の名前だよ。簡単だろ? すぐ書けるようになるよ」  キキも真似をして書いてみた。貴博から「上手だね」と褒められ何度も書いた。 「"タカヒロ"ってどう書くの?」  貴博が書いてやるとキキはすぐに真似をして何度も書いた。貴博は五十音の表を平仮名とカタカナの2枚書いてやった。それからというもの、キキは貴博が仕事に行っている間字の練習に励んだ。そしてある日貴博が仕事から帰って来るとテーブルの上に1枚の絵が置いてあった。  微笑む男性の頬にはピンクの色が塗られていた。そして横には「タカヒロありがとお」と書いてあった。  貴博は思わずキキを抱きしめた。少しだけキキは体を強張らせたが、その手は貴博の背中にまわされ、強く貴博のシャツを握りしめた。
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