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「いや、そういうことじゃなくて、、私のことではなさそうなのでこれで失礼しますね。さよなら。」
会話が不可能なことを理解し、とりあえず一礼してもう一度帰路につこうとした。
「まてまて、あんた以外居ないだろ。俺見てたぜ、爽快な中指だったよなぁ。」
「はあ、じゃあ私だとしてあなたになんの関係があるんですか。中指立てたのは悪いと思いますが、別にあなたに迷惑を掛けたわけでもなんでもないんですから、もういいですよね。二度と話しかけないでください。」
正直に言うと私は教習中何度も泣きそうになった。赤の他人に怒られることなんてそうそうないし、ましてや誰でもできる運転が私には出来ないことが本当に嫌だった。教官に隣でため息をつかれる毎日。私だって、失敗したくてしている訳では無い。運転自体が嫌いな訳では無いのに、教官から貰う評価に毎日ガッカリして、車校で頭が満たされる感覚。
本当に最悪。こんなヤンキーのせいで今まで我慢してきた分がジワジワと膨れ上がってくる。涙が出そうになるのを必死に堪えながらヤンキーを睨みつけた。ヤンキーを睨みつけた所で、こんな薄暗い気持ちが晴れるわけでもなんでもない。こんなことをする自分すらも嫌いになりそうだ。しまいには勝手に涙が出てきてしまう始末。突然泣き出す女なんて気持ち悪いよなーと、思いながらも悲しい気持ちがどんどん溢れてくる。
「ま、待てよ泣くなよ。泣かせたい訳じゃなくてだな、あーーほら。泣きやめ。」
ハンカチなど持っていないそいつは、自分の袖を私の目に押し当てた。
知らない人の男の人の匂い。慰められるなんて思わず、ふとした安堵感に涙が止まらずに出てくる。
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