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夜の紅茶
重ねた椅子を持ってアスタリスクの外に出る。
待たせていた勝利はひときわ大きなムクロジの下で、キラキラ星を歌っていた。
ツカサはすでにオイルランプと紅茶のセッティングを終えている。
「そっとしておこうか」
俺はテーブルの周りに円形の椅子を置いていく。
ツカサはそれに座ると頬杖をついて目を細めた。
俺も椅子に座る。
「……また今度、二人だけでこうしない?」
「気が向いたらね」
ティーカップを口元によせ、紅茶から立ち上る桃の香りを楽しんだ。
「やっぱり、人が淹れてくれる紅茶は良いな」
「俺が淹れたのが一番だろ?」
香りに誘惑されるまま、一口いただく。
澄んだ流れが喉を下り、暖かさを体に伝える。
「うん、一番だ」
どうしようもなく頬が緩んでしまう。
ツカサが満足げに口の端をつり上げた。
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