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三ツ森ツカサの執着
ダイニングキッチンでは予想通りツカサが待ち構えていた。
俺の進路を塞ぐように立って、素早く俺の手首を掴んでしゃがみ込む。
「今、撫でろ」
笑顔でこちらを見上げながら、掴んだままの俺の手首を揺さぶる。
ツカサのまっすぐさに心が揺れるのも事実だ、だが、それ以上に。
(俺はこれ以上ツカサに近づいていいんだろうか)
ツカサとは関係のない、過去のいろいろなことが呼び起こされる。
それらを振り払うように、首を横に振った。
「あんまり勝利を待たせたくないから、あとでゆっくりにしようね」
さらりと、期待を持たせないように放った言葉に、ツカサの笑みが深くなった。
「言質取ったからな」
軽い口調なのに、背筋に悪寒が走るような、じっとりとした執着が感じられた。
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