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ただ生きる
庭に出したモノを片付け、ツカサとの夕食を済ませた。
風呂もすぐに終えた俺は、ドライヤーを持ってツカサの寝室を訪ねた。
「ツカサ、風呂」
ソファに座るツカサの左手はテーブル上の日記に添えられ、右手にはシャープペンシルが握られている。
「一緒に入るのか?」
キラキラとした笑顔でとんちんかんなことを言うツカサにため息をつく。
「何でわざわざ入り直さないといけないんだよ」
ツカサがここに来たばかりの頃は毎日のように一緒に入っていたが、ツカサももう十五歳だし、俺にいたっては二十二歳だ。
もう、一緒に風呂に入るのがただ楽しい年齢ではない。
頬を膨らませたツカサが立ち上がり、手の甲で俺の胸をノックした。
「……少しくらい乗ってくれてもいいだろ」
ぷいっとそっぽを向いたかと思うと、俺の横を通り抜け、廊下からダイニングキッチンへ向かう足音を響かせた。
取り残された俺はベッドサイドの椅子に腰を下ろした。
指で髪をすきながらドライヤーを当てていく。
(帰れなかったら勝利もここに住むんだろうか)
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