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「今世でも僕の邪魔をするんだな。目障りな」
眉間に皺を寄せ、忌々しげに独りごちてから、腕を組む。
(ユーゴが己の真実にたどり着くのを待つべきか。……いや、これ以上アレとあのガキにユーゴを好きにさせるわけにはいかない、行こう)
少年は結論を出すと立ち上がり、右手を前にかざした。空間が切り裂かれ、そこから赤い光が溢れる。
(来訪者の役割を奪って無理矢理入り込もう。そうすればある程度はアレを欺くこともできるだろう)
「ユーゴ。かわいそうな来世の恋人。僕は今世でも会いに行くよ」
床に落ちている無数の刃物の中から錆びた包丁を拾い上げると、少年の表情が慈しみを含んだ笑みに変化した。
(あのガキの愛を信じるなよ、ユーゴ)
赤い光に吸い込まれ、地球ともアスタリスクとも違う異世界から、少年の存在が消え去った。
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