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赤い光と来訪者
「……祐護さん起きて!」
まどろみの中で、ゆるく体を揺さぶられている。
「ツカ……サ?……紅茶、淹れてくれた?」
記憶は曖昧だが、ツカサに紅茶を頼んでいたような気がしたので、そう尋ねる。
ツカサは瑠璃色の目を細め、穏やかで繊細そうな外見に似合わぬ元気な笑みを浮かべた。
「何の話だよ。それより玄関、光ってる」
ここは書斎だ。中央には螺旋階段があり、小さなテーブルセットが置かれ、壁一面を背の高い本棚が覆っている。
そして、それらと俺とツカサを、玄関側のドアの明かり窓から漏れる赤い光が濡らしている。
まどろむ前に読んでいただろう星座の本を閉じ、目を細めて玄関側のドアを見た。
「来客だね」
長方形の明かり窓の向こうで、光を放つ宝石を埋め込まれた両開きの玄関ドアがひとりでに開く音がした。
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