29人が本棚に入れています
本棚に追加
手でひさしを作って玄関側のドアに歩み寄り、明かり窓の向こうをのぞき込む。赤い光の中に小さなシルエットが見えた。
シルエットを確認したところで赤い光が一層強くなったので、目を閉じて明かり窓を書斎から隠すように背中を押しつけた。
瞼の裏に光の赤い残像が浮かぶ。どぎつい。
「今回のお客さん、おそらく小さい子だから怖がらせないようにしてね」
「……そいつが俺と祐護さんの邪魔をしなかったらな」
「はいはい」
そろそろ玄関の光が落ち着く頃だと思い、目を開ける。赤い光の残像はまだ目の前をうろうろしているが、かまっている場合ではない。
ドアから背を離して、光の消えた明かり窓の向こうに視線をやる。
シルエットの正体は男の子だった。
髪は栗色のツーブロックで、灰色のスクラブと黒の短パンを着ている。あどけなさの残る、かわいらしい顔立ちが印象的だ。
そんな男の子が、だだっ広く薄暗い殺風景な玄関に立って、声も上げずに腫れた目を擦っている。
おそらく状況は理解できていないだろう。違う世界に迷い込んだことにも気づいていないかもしれない。
最初のコメントを投稿しよう!