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王の休日(皇帝・女帝の正位置夫婦)
普段公務で忙しくしている、父こと『皇帝』の正位置には、週に一度皇帝という地位を休む日がある。
「あとは任せたぞ」
「いってらっしゃいませ」
残りの公務を信頼している使者に任せ、彼は普段被っている王冠を置く。プライベート専用の洋服に着換え、愛する女帝さんこと『女帝』の正位置を迎えに彼女の部屋に訪れる。
「あら、ずいぶんと早かったのね」
「この日を待ちわびていたからな」
「こういう時だけは要領がいいのね、あなたらしいけど。それじゃあ行きましょうか」
日頃より国を治める者として、国民の声に耳を傾け、よりよい国にしていこうと奮闘している二人。そんな二人は自分達も同じように国民の立場になり、この国は今どのようになっているのかを実感したいと思うようになった。そこで女帝が提案したのが、この休日制度である。
「今日はどこに行くのかしら?」
「問題になっていた谷付近に行くのはどうだ? 地形もそうだが自然の被害が深刻で、快適に暮らすのが困難であると聞く」
「まあ、それは心配ね……早速そこへ行きましょう」
休日であっても、国民達の事を常に考える彼等。その姿勢に多くの国民は尊敬し、一部の国民からはしっかり休めているのか心配されていたりもする。休日制度が設けられたとはいえ、行っていることは公務そのものであり、とても休みを楽しんでいるようには見えないのだろう。
ただ、当の本人たちはこの休日をとても満喫しているようで、国民達と交流したり自分たちの国を見て回るというのが楽しくて仕方がないようだ。
「ここか……これは確かに生活をするには難が多いな」
「見て、あそこから崩れかかってきているわ。このまま崩壊でもしたら一気に流れ込んできてしまうわね……」
「うむ、自然を破壊するようなことも避けたいものであるが、国民達を危険にさらすような場所は見過ごせぬ。どうしたものか……」
二人は国民達から聞いた危険地帯にも、積極的に足を踏み入れ、安全になるには何が必要かなどを模索する。使者や国民達から見れば危険な行為である為、やめてほしいという意見も多いそうだが、日常的に危険な目に遭っている者がいる限りはやめないと強く公言している。
「ねえ、ここには子供たちが遊べるような場所が少ないでしょう? 危険な所は少し削って、安心して子供たちが遊べる公園にするのはどうかしら?」
「公園か、それは良いかもしれぬな! 幸いここには美しい植物も多く存在する、国民達の憩いの場にもなるだろう。自然を残しつつ交流を深められる……そんな場所にしよう」
休日中に決めた事は、その日のうちに国民達の意見を聞き、賛同してくれれば即準備に取り掛かる。更に、休日中の作業に関しては、自ら手伝い一緒に汗を流すのだという。
「みなと共に同じ作業をするというのも、また格別なものであるな!」
「そうね、普段は絶対にやりたくてもできないことだもの。休日だからこそ出来ることよね」
一見変わっている休日の過ごし方だが、心から国民達を愛し、国を愛する二人だからこそ出来る、特別な休日。彼等からしてみれば、有意義な時間を過ごせるこの上ない休日なのであった。
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