第二十三話 夢を追うって孤独

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 誰かが言った。夢を追うのは孤独だと。  その夢に本気になればなるほど時間に追われる。友達と遊んだり、恋人とデートしたり、そんなプライベートな時間も無くなっていく。  趣味だったらのんびり楽しくやれば良くても、いざ仕事となると誰かと競争し、それに勝って結果を出さなければならないこともある。  何より、何があっても自己責任。  夢を叶えて成功できればいいけど、夢破れた時の『負債(ふさい)』はすべて自分一人で背負わなければならない。失敗しても誰も助けてはくれないし、手を差し伸べてもくれないのだ。  おまけに成功を手にすることのできる『勝者』はほんの一握り。圧倒的多数の者は鳴かず飛ばずで終わってしまう。  たとえ厳しい孤独に耐えたとしても、その先に待っているのは目も(くら)むような断崖絶壁(だんがいぜっぺき)。下ではまっ黒な海がすべてを呑み込まんと荒れ狂っている。破滅という名の怖ろしい荒波が。  それでも、人は夢を追わずにはいられない。  どこかを、何かを目指さずにはいられない。  未来に何が待ち受けているかなんて、予測できる人などいない。  だからってその不確定さに躊躇し、立ち止まっていたら何も手に入らない。  時には壁にぶつかり、傷つき(たお)れることがあっても、再び立ち上がって進んでいく。  たとえ夢破れることがあったとしても、生きている限り進み続ける。  ズタズタにされても、ボロボロになっても、何度でも立ち上がるしかないのだ。  たぶん、未来って何もしなくても向こうから勝手にやって来るものなのだ。  だったら後ろじゃなく、前を向きたい。  過去にしがみつくのではなく、明日を迎え入れる準備をしたい。  濁流に翻弄されるしかないのだとしても……進む先くらいは自分の意志で決めたいと思うから。
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