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文庫本と春のはじまり
彼と出会ったのは高校の部活でだった。
はじめは、見た目も言動も騒がしい彼のことをすこし避けていた。粗暴で相容れない相手だと思ったのだ。
けれどもある日のこと、僕が家に帰りたくないからもうしばらく部室にいたいと言ったら、彼は先輩から部室の鍵を預かって、僕に声を掛けてきた。
「ひとりで部室にいると怪しまれるだろ。
付き合うよ」
それから、彼は鞄の中から文庫本を取り出して静かに読みはじめた。いつもは騒がしい彼の意外な一面だった。
それから毎日のように、家に帰りたくないという僕に彼は付き合ってくれた。
一緒に本を読んで、ふと本から顔を上げると、彼と目が合った。
その時に見せられた彼の微笑みに、僕の中で恋心が芽生えた。
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