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01
とても小さくもろい場所。
おそらく長くは続かないだろう場所。
その世界は弱者ばかりが活きる世界だった。
住人たちは皆、非力だったり病弱だったりした。
そして、彼等の寿命は長くなくて、健康でないものが圧倒的に多かった。
そんな弱者の世界に、一人の強者がやってきた。
どこからともなくやってきた強者は、王様を名乗り。
その世界の統治を始めた。
しかし強い王様には、皆の気持ちが分からない。
弱者と言われている者達が何に悩み、何を問題としているのか分からない。
だから、王様はすぐに王様ではなくなった。
月日が流れて、その世界に再び人がやって来た。
その人間は弱者だった。
だから、その世界の住人たちの人間の事がよく分かった。
統治をおこなえば、成功し、住人達によい事づくめだった。
けれど、その王様は実は弱いふりをしているだけの強者だった。
その強者は、弱者を観察し、弱者からアドバイスをうけて、統治をおこなっていただけだった。
その王様は、弱者はいなくなるべきだと考えて、殲滅しようとする。
住民達が油断したすきをついて、皆を一人ずつ消していったのだった。
しかしそこに、いなくなった先代の王様がやってきた。
先代の王様は強くて、一人でも生きられる。
だから弱者の気持ちは分からない。
けれど、弱者とされる人達がいなくなっては良いとは思わなかった。
だから二人の王様は戦った。
強い者どうし、片方が自分の為に、片方は他人の為に。
弱者の世界の住人達は、最初の王様の味方に付いた。
他人の為に頑張る、弱者の味方になってくれた王様の方に。
やがて決着がつき、最初の王様が生き残った。
その後、住民達は最初の王様に向けて、再び王様になってほしいと願った。
強い人は、弱者の気持ちは分からないだろうけれど、それは教えれば済む事だから。
自分達を守り、一緒に戦ってくれた人に王様になってほしいと思ったのだった。
それから弱者の世界は、強い王様が統治していった。
たまに困った事が起きるものの、人々と王様は助け合い、乗り越えていった。
そのため、短くとも幸せな日々が続いた。
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