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「……それは。お前には本当に悪かったと思ってる。だから、お父さん卒業式はぜった──」
「要らない! そんな、しょうがなく来てもらったって嬉しくなんかないもん。お母さんだけでいい!」
最後まで言わせず全身で父を拒絶しているあやめに、大島はもう掛ける言葉など持たなかった。
「お姉ちゃん、ごめん。これいい、返すから……」
「あんたにやるよ、そんなもの! 欲しかったんでしょ!」
姉に押し付けられたペンをおずおずと差し出すさくらに言い捨てて、身を翻し自室へ向かうあやめ。
後悔先立たず。
先人の言うことに間違いはない、と頭の片隅で考えながら、大島は身体が固まったかのようにただ動けないままだった。
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