春霞

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 あやめは二十五歳になった。  大学を卒業すると同時に家を出て、就職先の近くで一人暮らしをしている。特に関係が切れたというわけでもなく、年末年始には必ず帰省した。  母親である妻とは、頻繁とはいえずとも連絡を取り合っているらしい。  ちょうど一年前に大学を卒業して自宅から通勤しているさくらも、来年を目途に独立を考えているようだ。 「子どもたちの成長は喜ばしいことなんでしょうけど、……寂しくなるわねぇ」  娘に相談を受けていたみどりがそう零していた。 「お父さん、『アレ』はあたし一生忘れないからね~。これからもいろいろ埋め合わせしてもらうよ。就職祝いとか、結婚祝いとかぁ」  大学生の頃には、もうあやめも笑いながら冗談めかして話題にできるようにはなっていた。さくらとも、たまに揉めることはあっても基本仲のいい姉妹だと思う。  それでも、彼女の本当の想いはわからないままだった。
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