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「あれ? 大島さん、今日お子さんの入学式じゃなかったですか?」
「そうだけど? なんで知ってるんだ?」
出勤するなり一年後輩で隣席の井川に問われ、大島は意味もわからず軽く返した。
「いや、大島さんの上の娘さんてうちの子の一つ下でしたよね? お住まいも僕と同じ加寿美市ですし。市立小学校はみんな今日入学式ですから」
式に出るのは六年生だけなんでうちの息子は休みで、と彼が続ける。
そういえば、去年井川は「子どもの入学式だから」と休んでいた。たかがその程度で、と呆れた記憶がある。
同時に、他の誰もが当然のこととして受け入れていた様子だったことも脳裏に浮かんだ。
ふと大島は、周りの空気がおかしいのに気づく。
つい先ほどまでは、勤務時間開始前ということもあって適度にざわついていた室内は水を打ったように静まり返っていた。
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