レンタル殺意

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 ─次の日─ 「う~んどこだぁ?」  俺はスマホの地図とにらめっこしながら都会に出てきた田舎者のような足取りで店に向かっていた。時々チラシに記載されてる住所が本物なのかと疑って眉間に皺を寄せガンを飛ばすが、その住所自体は実際のものであり、特に不自然な点も見当たらない。しかし「お店」と謳ってるくせに最新の携帯を使っても尚店の詳細が出てこないのは気持ち悪いったらありゃしない。今時、質素な個人店ですら住所と電話番号まで丁寧に記載されて出てくるというのに……。 「はぁ……」  溜め息を吐きながら、またスマホと格闘する。チラシを入れるくらい客が欲しいならもうちょっと分かりやすい場所に立地させるべきだろ。これじゃ大抵がたどり着く前に諦めて家に帰る。俺は絶対に帰らないけどな。と、言うのももし何かあった時に備えて俺は事前に銀行の窓口で三十万下ろしてきたのだ。数万円程度の商材なら買ってやるという覚悟を持ってまで俺は今日に命と人生を懸けてる。これで実際に行った途端に「殺しは駄目です」みたいな事を呆けようものなら逆に俺はソイツを殺してしまうかもしれない。騙されても良いと思ってる俺に対してそんな綺麗事を吐くなんて絶対に赦される事ではないからな。 「あ、あった」  数時間の奮闘の末にようやく俺は辿り着いた。薄暗い商店街のような場所でその店の上には錆びれ、ヒビの入った看板があり、そこに書かれていたのは確かに…… 「」  見つけた事による安心感の方が大きい。殺意を貰いに来たのにこれじゃペースを崩されただけで、また俺はこの一歩に躊躇ってしまうだろう。何度か咳払いをし、高鳴る胸を押さえながら浅く息を吸う。 「……よし」  顔を上げ、目の前の少し埃臭い異質な店と対峙する。裏路地だからか俺以外の人は見当たらなかった。猫一匹の鳴き声でさえ聞こえず、芯を刺すような冷たい風が横切るだけ。俺は札束の入った茶封筒とスマホをポケットに仕舞うと生唾を飲み店の扉を押した。
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