レンタル殺意

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「やっとこの時が来たんだ」  道中に俺は貰った薬の包装を喰い破り、中の錠剤を取り出して口に放り込む。爺さんは一錠で一人と言っていたが俺は貰った三錠全てを使った。噛み砕きながら粉々になった薬は俺の唾液と混じり、喉にドロドロと通っていく。薬特有の苦味はなく、喉を通りすぎた瞬間から一気にが込み上げてきた。  自分が一対何故躊躇っていたのか分からなくなるほど今は何でも出来るように全てが満ち溢れている。折り畳みナイフを携え、奴が住んでいる豪邸に辿り着いた俺は電柱の影に隠れて隙を伺った。 「・・・・・・・」  小一時間待ち、ようやく奴は外に出てきた。今から殺されるなんて事は微塵も思わず、呑気な欠伸をしながら、一緒に連れる嫁と子供を先に車に乗せると、自分は門扉を開けにこちらに向かって歩いてくる。チャンスは今しかない。  門扉が開き、人がいないか危険確認の為に顔を出した数秒を俺は見逃さなかった。その瞬間に電柱から飛び出して刃を立たせたナイフを奴目掛け振った。
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