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 にこり、とほほ笑む薄い唇の形はしなやかな藻類の弧のように美しい。  けれど目隠しで瞳が見えないこともあり、どこか信じがたい気持ちもあった。  警戒を解かずに、考え込みながらタガルは返答した。 「あたしから何を聴きたいと?言っちゃ悪いけど、あたしは姫でも王宮内部の情報にはものすごく疎いですからね!」 「そんなもの知ろうとも思っていませんよ」 「じゃ、マーラック人の弱みとか?」 「元が同種なのです。聴かずとも分かりますよ」 「えっ?じゃあ、じゃあ……」 「私の興味があるのはあなたです」 「……………?………えっ?」  スイッと、気づけば流れるような(ひれ)さばきでベクネはタガルのそばに接近した。自分よりはるかに長身の青年の接近に、思わず少しの畏怖を覚える。 「海底に遊びに来るラートンから、ずっとこちらの浅海の話を聴いていたのです。光溢れる豊かな海に、美しく快活な姫がいると。多くの民がその奔放さに魅了されているのだと」 「えっ?い、いやそんなことは……や、やぁねえもう!ラートンったら!」  先ほどの睨みはどこへやら、美辞麗句に免疫のないタガルは今度はバンバンとラートンの肌を笑いながら叩く。
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