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「ですから私は今回の使者に名乗りを上げたのです。  会ってみればなるほど、ラートンの言う通りの魅力的な姫だ。  あなたには是非、私の棲む海底帝国ホザイアにおいで頂きたい」 「え……い、いや気持ちは嬉しいけど。で、でも」 「あなたは本当に、この海と心中するつもりですか。  この星の表面はもう間もなくどの生物にも過酷な環境となる。  ハヴィオンの芽はもしかすると一時的なことかもしれない。  ………またこの海に戻りたいとは思いませんか」 「一時的な……?また同じような美しい海に戻ると?」 「あくまでも可能性の話です。  ハヴィオンが完全に星の終わりを迎えるかどうかは観測を続けなければ分からない。ホザイアには天体に詳しい科学者たちも多く存在します。  ホザイアではこの萌芽の出現は数年前から予見されていたのです。  ここで(たぎ)る海に茹でられて死ぬより、建設的な未来を見てみませんか。  あなたは民にとってカリスマだ。  あなたが行くと言えば、民も皆、その波に続くでしょう。  あなたがたは試練を乗り越えて生き延びなければならない。  簡単に死を、勇敢なもの、優美なものとすり替えて選択してはならない」  
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