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「いいや、わしは行かんぞ。エイエの海で生まれたものは海で泡となるのじゃ。わしの海は浅瀬のこの海じゃ。何もない暗い深海じゃあない」 「私も行かないわ。呼吸の練習をするですって?そんな身体にあってない呼吸法を今から教わるなんて無理よ。深海って、水圧も高いし酸素濃度も低いのでしょう。食べ物だって全く違う。そんな息苦しい生活なんてごめんよ」 「そうだそうだ。苦しみながら細々と暮らすなんてまっぴらごめんだ」 「我々マーラック人は光の海の民だ。光の海がなくなるならば一緒に滅して然りだ」  ベクネが民を集め、出立が今夜であること、呼吸法の伝授の必要性を伝えると、民の意見はやはり急速に否定的意見に傾いていった。  皆、マーラック人としての誇りがある。  星が倒れるならば、共に倒れようとそのような愛星心があった。  タガルはその喧々諤々(けんけんがくがく)と白熱する論議を、じっと黙って聴いていた。  少し前であれば、その言葉に同調していた。  けれど今は、誰かが一人でも助かるのなら、それに賭けてみてもよいのではないか、そうした方が良いのではないかと言う気持ちが芽生えていた。  ベクネが言っていた出立時間まで、あと2時間。  
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