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 『ハヴィオンに芽が出ると世界は消滅する』  それは、大昔からの言い伝え。  ただの迷信。だれもがそう、思っていた―――……  *********    マーラック王国は、海が地表の9割9分を占める小惑星エイエ唯一の王制国家だ。  海面に突き出した島々に村を作り、平穏に生きてきた。  半人半魚の種族の人口は三万にも満たない。  昼は漁をしながら海で過ごし、夜は危険のない陸で眠る。  王国には奔放で美しい姫がいた。その名はタガル。  タガルは高い地位を鼻にかけることなく、民と共に貝や海藻を採り、その明るさで多くの民に慕われていた。  また、タガルは民だけに限らず魚類との親交も深かった。  王国では一般魚類とは類縁として友好協定を結んでいるため捕食はしない。    けれど警戒心の高い魚類と種の枠を超えて仲が良くなれる者はなかなかいなかった。    20メートルを越える巨体を持つ水性哺乳類のラートンは、特に気難しい魚種で有名なのだが、タガルは幼少の頃から深い友情を育んでいた。 「ひゃっほ―――――――う!!!」  ラートンの背に乗り、海中から一気に上昇。  空中にポ―――ン!と放り投げられた後は、自慢の胸鰭(むなびれ)尾鰭(おびれ)を器用に使い、くるくると舞いながら華麗に着水する。 「姫様!まァたそのような危険な遊びを!」 「世継ぎを求められる大事なお体ですぞ!少しは淑やかになされては」
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