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「なんだあれは、ハヴィオンに尻尾が生えているぞ」 「長いものが出たり引っ込んだりしているな」 「何だかやけに暑いな。まだ本格的な夏前なのに」 「まさかだが……あれこそが預言の『芽』ではないのか―――――?」  ハヴィオンに芽が出た時こそ、世界の終焉―――……  『伝説の萌芽』出現に対する怯えは、瞬く間に全国の民に広がった。  それまでは海が年々拡大し、島が沈むことが増えても、最悪海中でも生きられるのだからと誰もが温暖化を楽観視していた。  基本的には呑気で、深く考えない気質の民なのだ。  けれど、今回の『芽』の熱波は常軌を逸していた。  磁場狂いのせいか、空いっぱいに七色のオーロラが発生している。  肌を焼くような強烈な熱波が何度も訪れ、浴びた島民の中には死者もあった。    慣れない高い気温に眠れない。  食料となる貝や海藻からも元気がなくなっている。  平穏な日々は瞬く間に失われ、急激な不安と恐怖がそれぞれの精神を蝕んだ。  ハヴィオンはどうなってしまったのだろう?  終末期の兆候だろうか?  ハヴィオンがもし、星の最期を迎えるとしたら。  惑星であるこのエイエも無事では済まない。
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