ふたりだけの紙飛行機

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 指先で優しくつまんで、空へ向かって、振り抜く。  群青色と溶け合うオレンジ色の境に、紙飛行機は吸い込まれてゆく。  その軌道が、ふたつに分かれた世界を、もう一度繋いだかのように見えた。 「──わぁ、すっごい、よく飛んだじゃん!」  あたしは歓声を上げる。桂子ちゃんは恥ずかしそうに微笑む。  紙飛行機を折るのは久しぶりだと言うけれど、折り目はきっちりしていて、将来の仕事は保育士さんが似合うなぁと思った。 「あたし、明日から勉強がんばろっかな。桂子ちゃんとおんなじ大学行けるよーに」 「……おんなじ大学。じゅりあちゃんとおんなじ大学かぁ、きっと楽しいだろうな……」 「でしょでしょ!? たまーに息抜きにおいでよ。いくらでもプリントあるし、一緒に紙飛行機つくろ」 「ふふっ、うん。ありがとう」  桂子ちゃんがこんな表情をすることを、あたし以外、誰も知らない。桂子ちゃんママには知られてはいけない秘密。  息苦しい世界にいる彼女に、外の空気を吸わせてあげるのがあたしの役目。あたしにしかできないことなんだ。まるで紙飛行機みたいに。
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