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ママの代わりの女の人は、お母さん。パパの代わりの男の人は、お父さんと呼ぶことにした。
だって、あたしのママはママだけだし、パパはパパだけなんだもん。
二人とも、とってもやさしかった。でも、おこるとパパとママよりもこわいの。
あたしが学校でけがをして、病院に行ったらお母さんは泣いていて、お父さんはふるえてた。
「友美ちゃんがぶじで、ほんとうに良かったわ」
お母さんがぎゅってしてくれたとき、少しだけママのにおいがした。心がぽかぽかした。ひさしぶり。
ママは、なかなか帰ってこなかったけど、あたし、お父さんとお母さんがすきになった。
こわいけど、やさしい。お話すると、たのしい。
パパとママみたいに、あたしを友美って呼んでくれるようになった。ちょっと、はずかしいけど嫌じゃない。
ずっと、いっしょがいい。そう思った。
「ひっこしよ。友美。あたらしいお家に行くの」
お母さんがそう言ったとき、あたしは、うれしくてぴょんぴょんした。学校にいる、うさぎみたいに。でも、お母さんは元気がないみたい。どうしてかな。
「あたらしいお家でお母さんの作ったごはん食べるのたのしみ!」
あたしがだきつくと、お母さんはいつも、ぎゅってしてくれるの。
その日も、ぎゅってしてくれたけど、お母さんは泣いていた。
「ひっこしするのは、友美だけなのよ。お父さんとお母さんは行けないの」
え?どうして?そんなの嫌だ!お父さんとお母さんは家族なんだよ!とあたしも泣いた。お母さんのエプロンが、あたしの涙でぬれた。
「お母さんね?友美のお母さんになれて、うれしかったよ。あたらしいお家で、あたらしい家族としあわせにくらしてね」
どうして?ママもパパも、お父さんもお母さんもいなくなっちゃうの?あたしは、ここにいたい!あたらしい家族なんて、いらない!
いっしょうけんめい、さけんだけど、気づいたら、目の前が真っ暗になっていた。
いつのまにか、寝ちゃってたみたい。あたしがおきると、知らない男の人と女の人があたしを見てた。
「こんにちは。友美ちゃん。今日からよろしくね」
二人とも、とってもきれいな顔をしてた。それから、なんとなく思ったの。ああ、あたらしい家族なんだって。
*****
時折、小さな音が聞こえたけど、あの頃のあたしには分からなかったの。新しい家族が機械だってこと。あたしはお父さんとお母さんを借りていただけだったけど、二人はあたしを買ったんだってこと。私が知っている外は偽物で、その向こうに本物の『外』があるんだってこと。
知ったところでどうすることもできないから、今もあたしは、ヒューマノイドの父様と母様のそばにいる。だって、そういう契約だから。
今では二人があたしの家族よ。捨てられたら生きていけない。ペットと同じでね。
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