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お兄様の微笑み
白地に紺とシルバーのラインが効いた貴族学院の制服を着こなしたお兄様は、街中で見るせいかとってもスタイリッシュだ。通りを行き交う女性達がチラホラとお兄様を気にして見てる。
納得の様な、ちょっと嫌な気持ちになる様な?
「お兄様!こちらでお会いできるなんて嬉しいです。僕たち今日トランプカフェに来てたんですよ?あ、紹介させて下さい。
僕のお友達でタクシーム侯爵家御嫡男のユア様です。お母様のお茶会で知り合ったんですよ。」
「はじめまして。ユアール タクシームです。リオン様とはいつも仲良くして頂いてます。今日はリオン様のお兄様にお会いできて嬉しく存じます。」
さすが侯爵家のユア様。9歳とは思えないシュッとした雰囲気を醸し出してる。僕と話す時とはちょっと違うなぁ。
「こちらこそ挨拶が遅れまして申し訳ありません。リュードゥベイト スペードです。僕のリオンと仲良くして下さってる様ですね。」
お兄様が美しく微笑んでるんだけど、何だか見た事がない笑顔だなぁ。しかも何か寒いし。天気は良いのにね?
「あれ?リュード、学院に戻らないのかい?」
声のする方を見上げると、少し離れた場所でお兄様と同じ制服を着たシュッとした人達が、僕達の方を振り返っていた。
お兄様はハッとすると、その人達から見えない様な位置に僕たちを隠す様に移動した。そして慌てた様に僕とユア様に挨拶すると急ぎ立ち去ってしまった。
ユア様はちょっとキョトンとした様だったけれど、お兄様に挨拶できたのが嬉しかった様で、僕にニッコリ微笑んで繋いだ手を楽しげに振った。
一方の僕といえば、慌ただしいお兄様との出会いは素敵なプレゼントの様なものだったけれど、去り際に囁かれた言葉が気になってしまっていた。
『今度屋敷に帰った時にお仕置きだからね?』
僕ってお兄様にお仕置きされる様な事、何かしちゃったんだろうか?初夏で暑いはずなのに、なぜか首筋がゾクッとしたんだ。
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