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沖田はピタリと足を止めた。眉一つ動かさずに俺の顔を凝視するだけで、何も言わない。
時間にして1分程度だと思うが、とても長く感じた。
こんなに沖田の顔を見たのは久々な気がする。鼻が高くて目が大きい。黙っていれば、美人なの、か?
そう思った次の瞬間、沖田は眉を歪ませた。
「アンタの面倒になんかならないよ。何自惚れてんの?」
トレーを強引に取られて、怠そうに食器を下げた沖田は、そのまま校外へと消えて行った。
怒っているような気がしたが、機嫌が悪くなるのは毎日のようなもんなので、また始まった。くらいにしか思えない。
毎日毎日、面倒で嫌な女だ。皆が憧れるような幼馴染ではない。
可愛げのない、社会不適合者。いっそ寮付きの住み込み労働でもして、社会の厳しさを知ればいいんだ。
俺は沖田とは絶対に結婚しない。
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