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ゼミの仲間が気を利かせてメニューを手渡してくれた。どうやらゼミの皆でしょっちゅう来ているらしい。俺だけが何を置いてあるか知らないなんて、しばらく休んでいたみたいで恥ずかしいな。
酒は弱くないが、強くもない。程々に、嗜む程度に。だから、ここは――。
「俺は沖田がどうせ中途半端に飲んで半分残すだろうから、烏龍茶でいい。で、沖田は何にす……」
隣を見ると、沖田ではなく永倉。そのまた逆は名前も知らないゼミの奴。
顔が青くなった。マズイ、沖田がいるもんだと勘違いしてしまった。いつも沖田は中途半端に色々注文して気に食わなかったら残すのだ。だから俺は控えめに注文して、その残飯処理をしてやってるんじゃないか。
待て、残飯処理? なんで俺が彼奴の食い残しを処理しなきゃあならないんだ! そんなことをやっていたから、癖で失態を犯しているんだよ!
おかげで場は変な空気になった。クソ、せっかく大学生活を謳歌してやろうと思ったのに!
選ぶのはやめだ。メニューをテーブルに叩きつけ、かいた恥を捨てるように叫んだ。
「とりあえず、ビールで!」
沖田は忘れる。そのために来たことを忘れるな!
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