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いよいよ瞼が視界を支配しようとするとき、ゼミで一番美人で人気の芹沢さんが思い切った声と右手を上げた。
微睡んでいた俺も、彼女の声で目が開いた。
彼女を見れば、彼女も俺を見ていた。視界がぼやけるので顔のパーツはよく見えないが、そんなに美人だとは思わない。沖田ならぼやけても顔が整っているのはわかるのにな。俺の目が腐ってんのか?
とりあえず俺に用事かと首を斜めに傾けると、彼女は控え気味に頷いた。
「沖田ちゃんの事で気になることがあって……」
「気になること? 芹沢さん、沖田ちゃんと絡みあったっけ?」
「直接はないんだけど、友達から聞いた話っていうか……最近まで沖田ちゃんとバイト先が一緒だった子がいて……」
芹沢さんが確かでないけどと保険をかけつつ、話始めた。俺の知らないかもしれない、俺といない時の沖田。
暴君だったのは、俺だったのかもしれない。
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