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5怒目 苗字は絶対に譲りません!
芹沢さんが沖田の元バイト仲間から聞いたという話を共有してくれた。
俺はいろんな勘違いをしていたらしい。
まず、沖田はニートではなかった。沖田はなりたいものになる為に、俺に隠れて努力をしているらしい。
「刀鍛冶職人?」
「そうらしいよ。刀鍛冶職人になりたくて、県内外のいろんな所に出向いてるんだって……それで」
「それで?」
「……」
芹沢さんは言葉を詰まらせた。
沖田が刀鍛冶職人になりたいと言っていたのは知っているが、まさかその為に動いていたとは知らなかった。
たまに顔を見ない日があったが、まさかそれが理由か?
彼奴、ゲーセンに入り浸ってたなんてウソツキやがって。
話の続きを聞きたがると、芹沢さんが鼻で息を吐いてから答えてくれた。
「……沖田ちゃんって、美人でしょう? 刀鍛冶職人になりたいなんて自己紹介で言うみたいで、変に反感買っちゃうみたいなの。美人で個性を主張すると、同性は敵に回りやすくなるから……彼氏がいるとなるとさらに、ね」
その理屈は全く理解できないが、ただの妬み嫉みで沖田が一方的に嫌われて、それに腹が立った沖田が詰め寄って喧嘩になる。らしい。
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