5怒目 苗字は絶対に譲りません!

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 芹沢さんは酷く怒っているように見えた。いや、憎んでいるのか。折角美人だと言われてちやほやされているんだから、そんな顔をしたら皆に引かれるだろうに。 「土方くん、鈍感なんだね」 「感は鈍いな。さっき証明された」 「私がどうして追いかけてきたのかとか、沖田ちゃん離れしてって言ったかわからないの?」 「……」  さすがにわかった。芹沢さんは俺の事を異性として意識しているのかもしれない。言われてみれば訳に近くにいたり、休日の予定を聞かれたりしていた気がする。  ゼミイチの美女に惚れられるとは、俺は罪な男かもしれない――なんて素直に浮かれる事が出来たらいいのに。    そんな事を考えたら沖田が泣くかもしれないと思うと、その好意すら嫌悪に感じ、芹沢さんが仲を引き裂こうとする悪女にしか見えなくなった。   「俺は嘘吐きなんだ。思った事と反対の事を沖田には言ってしまう。沖田が現状に安心してると、何処かに行ってしまうぞなんて、不安にさせたかったんだ。でもいい。沖田は沖田で頑張っているとわかったから、嘘をつかなくてよくなった」 「じゃあ今までのは……? 本当に嘘だったの?」 「ああ」
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