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相槌と共に、頬を勢いよく叩かれてしまった。この後、彼女は俺の愚痴を肴にして酒をたらふく飲むだろう。俺はゼミイチの美女を本気にさせてたぶらかしたクソ男だと。
元々あまり好ましくないと思うのは苗字のせいか、などと偏見で嫌ってしまっていた事は言えない。
にしても、一方的に好意を持っておいて打つとはどういう教育を施されて来たんだ? それとも美人の特権か? フったのは俺のようなもんなのに、俺がフられたみたいになったな。
さて、本当にフラれちゃいけない奴にフラれる前に帰ろうか。
✳︎
自宅を目の前にすると、隣の一軒家にも明かりが灯っていた。沖田家にも人がいる。沖田はともかく、叔父さん、叔母さんは居るって事だ。
もう21時。こんな時間にインターホンを押したら迷惑だろうが、今日は許してほしい。いいえ、幼馴染なんだから、許してください。
勇気を出して呼び鈴を鳴らすと、すぐに叔母さんの声が返って来ては、扉が開いた。
「あら」
「こんばんは。すみません、こんな遅くに」
「いいのよ。全然会おうとしない洋に痺れを切らしたんでしょう? さっき帰って来て部屋に居るから、どうぞ」
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