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叔母さんは話がわかる人だ。俺の顔を見て全てを察してくれる。お言葉に甘えてお邪魔すると、陽気な叔父さんも歓迎してくれた。沖田家の良いところは皆明るくて、細かい事は気にしない性格だって所だ。
2階にある沖田の部屋に迷わず向かう。廊下に仄かに香る石鹸の匂いに、胸がザワザワした。
どうせ裸でベットに転がってるんだろう。覚悟して扉を開けた。
「沖田!」
「……なんだよ、五月蝿いな」
久々に訪ねた沖田の部屋には本が山積みになっている。決して沖田が読まなさそうな、難しい本に付箋がついていて、手元にあるノートは真っ黒だ。
一冊拾い上げてみた。芹沢さんの言う通り、どれも刀に関するものばかり。本気で沖田は刀鍛冶職人になりたいらしい。
「芹沢って女に聞いたんだろ」
「ああ。バイトをクビになった理由も聞いた。今まで悪かったな」
「別に? アンタの事を財布だと思ってたのは本当だし。都合が悪くなったから利用しなくなっただけよ。なんの用?」
沖田は落ち着いていた。寧ろ冷めていた。勉強の邪魔だから消えてくれ、とも言われそうだった。
俺の顔を一切見てくれないから、尚怖い。
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