5怒目 苗字は絶対に譲りません!

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 今、素直にならなければ今までの22年間が無かった事になってしまう気がする。恐らく、沖田だって同じ気持ちなんだ。俺と同じ気持ちで無ければ、刀鍛冶職人なんて目指す訳ないんだから。  昔、それも中学生とかそのくらいの頃。土方と沖田でセット扱いされるなら、刀でも持ってみたいもんだなぁと痛々しい発言をした事がある。  どうせなら、きちんと刀鍛冶職人が目の前で打ったものの方が浪漫があっていいなんて、訳の分からない事を言った記憶だ。あんまりにも痛くて、恥ずかしい記憶として残っている。  だが、沖田もその発言に乗っかって来ていた。沖田は、女の刀鍛冶職人が居たらかっこいいかもしれないと目を輝かせ、毎日包丁を金槌で叩いて真似をして、叔母さんに怒られていたっけ。 「他の誰かのたった一言で、俺達の22年間は無くなるのか?」 「何? 別に、ただの幼馴染なんでしょ? アタシ以外の女が結婚して欲しいって言ってんだから、すりゃあいいじゃん。社会不適合者のアタシはほっといて」  クソ、俺がついて来た嘘が仇になってる! んな事微塵も思って無いつうのに、過去の俺は本当に最低だな!
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