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本気で何をしに来るのかと問う顔だ。
俺の勇気返せよ。空気でわかるだろ。
✳︎
俺が大学を卒業すると同時に、俺と沖田は京都へ引っ越す事にした。
今まで隣に住んでいたが、京都では同棲する事になり、なんならもう籍を入れてしまえと同家の両親が強く押してくるので、なんやかんやで結婚する事になった。
どうせなら婚姻届は新撰組の聖地・京都で出そうと決まったが、俺達はその苗字が故にまた喧嘩が絶えないでいる。
「絶対に土方になりたくない! アタシは沖田総司の生まれ変わりなの!」
「沖田総司とは一切関わりのない沖田家だろうが! 俺は土方家の長男なの!」
「出た出た、古い考え方。男の苗字に女がなるなんて決まり、法律にあるんですかぁ? アタシと離れるのが寂しくて京都に来たくせに、黙って沖田を名乗れっつうんだ!」
土方になるか。沖田になるか。
京都に来たらますますお互いに譲らず、苗字への思い入れが強すぎて籍を入れられないんである。
第三者を交えて話し合いもしたが、喧嘩がヒートアップ。大体面倒くさがられて相手にされない。
「あのー……決まったらまた来て頂けますか」
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