ともだち

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明け方、ピリピリと耳に浸み込むような冷たい空気が流れて来た時。 ブルブルッと全身を大きく震わせて、ネコさんが目を開けた。 「ネコさん! 生きていてくれたんだね!」 ぼくは、嬉しさのあまりネコさんの胸に飛び込んだ。 「あああ、何があったんだ? オレはどうしたんだ?」 ネコさんは、もう一度、ブルブルッと体を震わせた。 薄明るい朝の青い空気の中に、メチャクチャになった部屋の様子が浮かんで見えた。 部屋と言っても、そこにはもう屋根も壁もなかった。 辺り一面、果てしなく瓦礫が積もっているばかり。 それでも、ぼくは、ネコさんが生きていてくれただけで、何もいらないと思った。 ネコさんと、いっしょなら、どんなにメチャクチャで、何もない世界でも平気だと思ったんだ。 ところが! ボンッ! と、大きな音がして、少し離れたところで火の手が上がった。 「ガスに火がついたかな?」 ネコさんの恐怖に怯えた瞳の中に、燃え盛る炎がメラメラと映っている。 「早く逃げよう!動けるかい?ネコさん?」 ぼくは本能的に炎が怖くて、急に体が震え出した。 「ダメだ。オレは動けない。ネズミくん、早く逃げろ!」 ネコさんは、ぼくを前脚で追い払おうとした。 火の手は、どんどん迫ってくる。 「ネコさんを残して逃げられるもんか!そうだ!ネコさん、ぼくを食べて。ぼくを食べたら力が湧いて、きっとネコさんは立ち上がれる。それこそが、ぼくの命の役目だったんだ。」 ぼくは本当に、そう思った。 それこそが、ぼくにしかできない、素晴らしいぼくの役目だと思った。 けれどもネコさんは強い口調で言った。 「大切な友だちを食べられる訳があるか。ネズミくん。本気でオレを大切に思うなら、オレの最後の願いを聞いてくれ。ネズミくんは必ず生き延びて、オレの分まで幸せになってくれ。キミという希望まで、オレから奪い取るな!」 「イヤだ。イヤだ。絶対にイヤだ。ぼくは、絶対、ネコさんといっしょに逃げる。ネコさん。立ち上がるんだ!ネコさんが立ち上がるまで、ぼくは、ここを動かない。」
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