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『不思議な金魚の話』
主人公は、美術部2年、A子さん。
彼女は金魚を題材にして色鉛筆画を描きたかった。
筋肉のつき方やヒレの動きを、実際に見ながらデッサンしたい、と希望していた。
ただ、もし美術室で金魚を飼うなら、水槽やろ過フィルター、餌がいるよね。
描き終わったからといって、ポイッと捨てるわけにもいかない。生き物を飼うなら責任持って、最後まで世話しないとね。
だから、金魚を買うんじゃなくて、レンタルすることにしたんだ。
美術部員の中に、金魚すくいを含む、イベント用品レンタルサービス屋の子がいてね。
まあ、ここではレンタル金魚屋とでも呼ぼうか。
そのレンタル金魚屋の子が、特別に3週間、無料で金魚と水槽を提供してくれたんだ。
金魚の種類は赤と白のコメット、5匹。
設置場所は、ちょっと暗いけど、美術準備室。美術の先生の控え室にもなってたから、金魚の世話も頼みやすいと思ってね。
さあ、このA子さん、見栄えを良くするために白の底砂を敷いて、いよいよ、金魚を描きはじめた。
ただ、描きはじめて2日目以降、運の悪いことに家の用事が重なった。
A子さんが次に、美術部の活動に参加できたのは、その約2週間後。
久しぶりに水槽の中を覗いたA子さんは、驚いて声をあげた。
ーー私の描いてた金魚がいない!
金魚の数は5匹、特に減ったり増えたりしていない。
でもA子さんは、間違いなく、これは自分が描きはじめた金魚ではないと主張するんだ。
その証拠に、1日目に撮った写真まで見せてくれた。すると確かに、写真に映った金魚は、水槽の中には泳いでいなかった。
さあ、A子さんの金魚はいったい、どこへ消えてしまったのか?
ちなみに、金魚に毎日餌をあげていた美術の先生には、A子さんが、なぜこんなことを言うのか分からなかった。
これがヒントだよ。
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