chapter 02:愛恋。

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chapter 02:愛恋。

 ――朝の日差しが目に染みる。俺から筑紫がいなくなって一日が過ぎた。  今日が休日で良かったと、俺はほっとため息をついた。 「じゃあ、行ってくるわね? 留守番お願いね」  そう言ったのは俺の母さん。父さんと腕を組んで玄関に立っている。なんでも夫婦水入らずで温泉旅行に行くのだと張り切っている。  二人は一〇〇〇をも超える年月を生きているというのに、見た目はいまだに二十代後半でも通る。  人間から血液を奪うヴァンパイアのように不死とまではいかないが、まあ、祖母さんも祖父もいまだに元気だから、寿命はほとんど永遠に近いだろうが。  そんな彼らは生涯を共にする伴侶を得ている。それぞれは愛し合い、支え合って生きている。  俺も、筑紫とこうなれれば良かった――。  そんなこと、有り得ないのにな。 「ああ、一泊して帰ってくるんだろ?」 「当然!」  俺の言葉に、母さんは満面の笑みを浮かべた。  じゃあ、とそう言って二人がドアノブに手をかけた時だ。突然チャイムが鳴った。  嫌な予感がした俺は、目の前にいる母さんと父さんをすり抜け、ドアを開けた。  そこにいたのは俺よりも頭ひとつ分背の低い、大きな目が印象的な筑紫だ。  昨日の放課後。これ以上ないくらい筑紫を傷つけた。それなのに、まだ懲りもせず俺の自宅までやって来ることが信じられない。
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