chapter 02:愛恋。

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 それでも筑紫はやはりダメージをくらっているのか、目が潤んでいる。そればかりか昨夜からずっと泣き通しだったのだろう。瞼が赤く腫れている。  筑紫は俯き、ただ突っ立っていた。  年頃の男子よりも背は低いと思っていたが、いつも以上に背が低く感じるのは、おそらくは昨日、俺が振ったからに違いない。  項垂れている筑紫はとても悲しげで、苦しそうだった。  できるなら、悲しむことはないと(なだ)めてやりたい。  こうやって筑紫は俺の中に眠っていた母性を簡単に引き出すんだ。  俺は筑紫を保護したくなる感情を押し殺し、伸ばしたくなる両手に拳を作って耐える。 「何しに来た。お前とはもう何の関わりもないと言った筈だ」  できるだけ声を低くして、目を逸らしたい気持ちを堪える。  もう別れると決めたのに、俺の方が打ちのめされそうだ。 「――っつ!!」  もう貴方には愛想が尽きた。別れて清々すると言ってほしい。  そして一刻も早く俺から去ってほしい。  そんな俺の気持ちを知らない筑紫は、華奢な肩を震わせた。 「まあ、悠騎。そんなに怒って、いったいどうしたの? お友達とは仲良くしなきゃダメでしょう! さあ、中へどうぞ。私たちはこれから出かけるけど、ゆっくりしていって頂戴ね?」  何を思ったのか、母さんは横から入って来るなり、筑紫の背中を支えて中に入るよう促した。
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