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「……けっ? 結婚? いや、そんな急な話じゃ」 「俺、今日はやっぱり帰ります。すぐにでも親に話して一日でも早く一緒に住みます!」  涼介は開から手を離し、弾むようにベッドから飛び降りた。 「待って、待って待って涼くん」 「待てません。開さんの気持ちが変わらないうちに早く行動しないと」  開を信用していないわけではないが、長く抑圧してきた気持ちの解放にいてもたってもいられない。 「変わらないから。もう変わらない! だから、もう少し一緒にいて……」  畳んであったジーンズを取ろうと涼介が屈んだ時、開は背中側から涼介を抱き止めた。  振り向くと、真っ赤な顔で眉根を寄せて懇願する開がいる。その表情のなんと可愛らしいことか。  弱々しい開、艶めかしい開、かっこいい開、かわいい開。今日だけでもたくさんの開を見た。それらは全て涼介が引き出したもので、涼介だけが見ることができる開だ。 「もう……開さん。ずるいよ……」  涼介は観念して開に向き直り、腰に腕を回して抱き寄せて額をこつりとぶつけた。  ──やっぱり押し倒してめちゃめちゃに感じさせたいなあ……。  最後まで求めないなんて、開にされてもいいなんて、勿論本気だけれどちょっぴり後悔だ。 「ねぇ、開さん。俺、帰らなかったらまた絶対に興奮しちゃうよ? どうすんの?」 「うっ……それは……。我慢、我慢して。涼くん、先へ進むにはやっぱりまだ早いから」  ──早くねーよ。  声には出さないが涼介には珍しく悪態をつく。開は涼介の不満げな表情からそれを察した。 「……一緒に、住んだら、ね……? だから今日はこれで我慢して」  開の顔が近づく。閉じた瞼は照明を浴びて光り、長いまつ毛が涙袋に影を落としている。  涼介と開の鼻が触れる直前、開の唇が軽く開くのが見えた。  最初からもう濡れた音がして、唇や舌がすぐにしっとりとした熱感を帯びる。  甘い。とびきり甘く感じる。涼介は自らも開の舌に舌を絡め、口内を潤す甘い蜜を啜り、開を拘束するような抱きしめ方はしない代わりに、指を使ってうなじや耳たぶを擽り撫でた。 「ふ……んッ……」   開から吐息が漏れて身体がピクリと揺れる。  涼介はその吐息さえ逃さないよう口を縦に開き、静かに吸い込んだ。  やがて、開の舌よりも涼介の舌が優位に動くようになり、開の口内は涼介の熱で隙間なく埋め尽くされる。  互いに蕩けそうだった。  開は少しも怖くないのに身体が震えて必死に涼介の服を握ったし、涼介は開を怖がらせないよう気を付けながらも、滑らかな肌に少しでも触れていたくて開の肌を撫で続けていた。  二人とも、頭の中で「一緒に住んだら」の言葉を反芻させながら────
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