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「二人の結婚を祝福します! おめでとうございます!」  二人が書き終えると涼介の姉が言って、涼介の母が宮前から渡された指輪を二人の前に運んだ。 「おめでとう。開さん、涼介。みんなあなた達を祝福しているからね」  涼介の母は泣きながら笑っている。  ──ほら、亮輔。嬉しくても泣くんだよ。僕だけじゃないでしょう?  頭で亮輔に言いながら、開も鼻と喉を熱くした。涼介もほんのりと目を赤くしている。  涼介と互いに指輪をつけ合う。今までに無いくすぐったさを薬指に感じ、二人は目を合わせてはにかみ笑いをした。 「さあ、パーティーですよ。お二人のこれからの幸せを祈って乾杯しましょう」  優汰が会食の席から皆に声をかけ、宮前がシャンパンボトルを持った。だが、宮前は栓に手をかけずにボトルを上下に振り始める。 「わ、宮前、まさか」 「宮前さん、まさか」  開と涼介の声が揃う。 「ご名答」  宮前は小悪魔のように無駄に妖艶に微笑んだ。  宮前だけでなく、優汰も冴子も、涼介の家族も皆笑っている。 「ほら、祝福の雨だ!」  宮前が高らかな声で言って栓を抜く。  次の瞬間。  開と涼介に光るシャンパンが降り注いだ。涼介が開を庇おうとしたが、二人とも同じくらいにシャンパンシャワーを被った。  甘くて芳醇な香りに包まれる。  身体は濡れてベトベトなのに、心は幸せな気持ちでいっぱいだ。 「新郎本條開! 同じく新郎本條涼介! この先、二人は互いを守り、悲しい時はそばで寄り添い、嬉しい時は共に喜び、夫として、家族として永遠に愛し合い続けることを皆に誓うか?」  宮前が最後の一滴を二人の頭から落として聞いた。 「今さら! もうとっくに誓ってるから! でも何度だって誓うよ。俺達は永遠の愛を誓います。ね、開さん」  開が言葉無く頷こうとする前に涼介が言って、にっこり笑うと開の手を取り口づけた。 「りょ、涼くん!」  瞬間で、開の白い頬は桜色に染まる。 「本條開、お前も口に出して誓えよ」 「そうよ、開、さっさと皆の前で宣言しちゃいなさい」  宮前と冴子が囃し立て、涼介の両親も姉も期待の目を向けて頷いた。  涼介の言う通り、既に涼介本人へ愛を伝え、家族へも決意を表明している。  けれど、今日は特別な日。  ──いや、特別な日じゃなくても、言葉にして思いを伝えることの大事さを良く知ってる。  開は微笑み、唇を開いた。 「今日、僕達はここに集まった皆様に見守られ、晴れて家族となりました。今日のこの喜びを忘れることなく、二人、幸せを築いて行くと誓います」  ──何度だって誓おう。愛する人が、人達が、そばにいてくれるから。  その日、開は誰の目から見ても、これまでの中で一番晴れやかな顔をしていた。  春来たりて END
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