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⑦
一月
十二月に本格商品化された俺のメンズシリーズは、クリスマスシーズンを味方につけて売れ行きも好調だった。
石をタンザナイトではなく、各月の誕生石に置き換えたこともまた、販売促進にプラスとなった。
「今回はミヤマエに完敗だな」
レオの部屋で、高級ワインで乾杯する。
新進デザイナー企画が十ニ月末を持って終了したため、ささやかなお疲れ様会だ。
「なに言ってるんだ。レオのだって結局三点とも売れたじゃん」
「まあそうだけどさ。派手さを求めすぎてる。もう少しブランドイメージに沿って、って上からの評価付きだからね。俺の感性がわからないなんて、ナンセンスだよな」
肩をすくめてからグラスのワインを飲み干し、おかわりを注げとばかりにグラスを俺に差し出すレオ。
俺は「はいはい」と言ってボトルを両手で持って傾けた。
「ミヤマエ、これはジェラシーであり、祝いの言葉でもある」
「?」
突然に話しを変えたレオは、俺がせっかく注いでやったワインのグラスをテーブルに置いた。
「君の企画商品、購入したのはジェイデン・ウィルソンだ」
「……は? なにを……」
「GODISCO社が上場したのは知ってるな? その関係で、昨年末はウィルソン氏がネットニュースなんかでも良く取り上げられてた。……その様子じゃ見てないな。あのな、俺たちみたいな、世界に商品を出していくデザイナーは経済には精通しておくべきだぞ」
レオはやれやれ、とため息をつくと、自分のバッグからタブレットを出して操作し、俺に向けた。
「ほら、見ろよ」
レオが開いてくれた画面にはスーツ姿のジェイの立ち姿が掲載されていた。新しく上場した企業の特集が組まれているのだ。
ジェイ……久しぶりだな。変わってない。ごはん、ちゃんと食べてるみたいだ。良かった……。
「……あ……?」
スクロールした下の画面の写真。胸から上が大きく写っていて、なにかを説明しているのだろう。顔の位置で右手が開かれている。
「このカフス、ミヤマエのだろ? ピンブローチも」
レオが画面を指を指す前にわかった。
ジェイの袖の内側に、蒼い石がついた福寿草モチーフのカフリンクス。スーツのフラワーホールにも、福寿草のピンブローチ。
間違いなく、俺がデザインしたものだ。
「ほら。こっちも見ろよ。ウィルソン氏はルックスがいいから、ファッションが注目されたりもするんだ」
レオが画面を操作した先、全世界的なシェアを誇るSNSの画面には、ジェイがつけているアクセサリーを特定した投稿や、同じものを購入したいとする投稿が多数連なっていた。
「……え、待って。ブランドネームだけじゃなく俺の名前も出てるんだけど」
「今回のアクセサリーは一点物だけど、お客に出回ったインビテーションカードからブランドとデザイナーの名前が特定されたみたいだな。もともとが即日ソールドって言うのもあるけど、SNSで広まって、ブランドに問い合わせが多数あったんだろ。それでクリスマスに合わせて早々に売り出したんだ」
全然知らなかった。新聞には目を通すけど、ネットニュースや、特にSNS系は開くことがないから……でも……。
「じゃあ、ジェイが買わなかったら今の状況は無いってことじゃないか?」
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