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そんなふうに、いい意味でも人間はいろんな自分を持っている。あれが本当の自分、これは嘘の自分、なんて分ける必要はない。どれも、生きてきた中で獲得した自分自身なのだ。
「どんなヒューでも、僕にとってはマフユ・ミヤマエ、僕の愛する人だよ」
いつもそう言ってくれるジェイは俺の過去を詮索しない。でも、同じような子供時代を過ごしたことを感じ取っていて、気を遣ってくれている。
だから、いつかはジェイにも打ち明けるかもしれない。本條にしか聞いてもらったことのない、俺の話を。
本條とだけ分け合ってきた、辛く寂しいあの頃を。きっとジェイは、包み込むように俺を受け止めてくれるから……そして、紹介したい。俺の半身であった本條を。
ジェイにジュリアがいたように、俺にも本條がいたこと。その出会いの延長線で、互いに心から愛する一生の相手に出会えたことを。
「ヒュー? いるのかい?」
気配を感じさせてしまったのか、ジェイの声が背中で聞こえた。
「ごめん、起こしたね。ジェイが恋しくなっちゃって」
ベッドサイドに寄りジェイの鼻にキスをすれば、すぐにダウンカバーをめくって暖かいベッドに誘ってくれる。
「おいで、一緒に眠ろう」
あたりまえみたいに在る俺の場所、ジェイの腕の中。
俺はもう、二度と一人の不安な寂しい夜を過ごすことはないだろうと確信する。
そして、ジェイにもミアにもそんな思いはさせないと誓う。
「おやすみ、ヒュー。今日は昨日よりもっといい日になるよ。良い夢を」
「おやすみ、ジェイ。明日はもっと愛してる」
どこまでも増えていく幸せと愛。
感謝することと信じることを覚えた俺は、ジェイと唇を重ね、安心して夜の闇に身を委ねた。
White Love END
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