第六章

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 やがて花火が始まるというアナウンスが場内に流れた。  「もうすぐだよ」千春はそう言ってジルの体にくくりつけてあるひもを巾着袋から外し、花火がよく見えるように肩の高さまで持ち上げた。  「ルビック星には花火はないの?」亜里沙が聞いた。  「ないよ」  「じゃあ楽しみだね」  「うん」  しばらくすると、広場のすぐそばを流れる川の河川敷からヒューという音が聞こえてきた。そして夜空に大輪の花が咲いた。  「きれいでしょ、ジル」千春はジルに言った。  「うん、きれい」  そして次々に花火は上がり、夜空を彩った。千春と亜里沙、そしてジルは、しばらく言葉を発せずに空を見上げていた。  千春は思った。この花火は来年も見ることが出来る。しかしその時ジルはいない。ジルと一緒に見る最初で最後の花火なのだ。千春はジルの体をしっかりと抱きしめながら、花火をその目に焼き付けていた。  ジルは千春の顔を見て不思議そうに聞いた。「ちーちゃん、どうして泣いてるの?」
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