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その日の夜、千春は自宅から翔太の携帯電話に電話をかけた。
「翔ちゃんごめんね、こんな時間に。どうしても気になることがあって……」
「何だ、どうしたんだ」
「その、ルビック星の一年は、私たちの二年になるんだよね」
「ああ、日数が約2倍だからな」
「たとえばジルがあと25年しか生きられないとして、ルビック星では50年生きることになるんだよね」
「ああ、そうだ」
「でも、地球とルビック星は同じように太陽の周りを回っているんだから、やっぱりルビック星でも25年になるんじゃ……」
「それに気付いたってことは、お前もわかってきたってことだな」
「え、じゃあ私をだましていたってこと?」
「そうじゃない、感覚の問題なんだ」
「感覚?」
「ああ。たしかにお前の言うとおり、ジルはあと25年しか生きられないかもしれない。でもジルはその25年をルビック星で暮らすんだ。ルビック星の感覚では、俺たちの50年になる」
「そうなのかな……」
「考えてもみろ。ジルはまだ10歳だ。俺たちより年下だ。でも結婚して子供もいるし、一人で地球まで来たじゃないか。ルビック星の感覚では20年生きてきたってことだろ」
「そっか……」
「安心しろ。25年後ジルは70歳のおばあちゃんになってるはずだ」
「それはそれで嫌だな。25年後、私は36歳だから……」
「それが感覚の違いなんだ。一日の長さが違うんだからな」
「そうだよね……あ、ありがとう。おやすみなさい」
「ああ、おやすみ」
千春は電話を切り、ベッドに向かった。
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